TinyTrak4
TinyTrak4/受信性能
受信性能をTNC-22とTinyTrak4とAGWPEとで比較しました。
概要
TinyTrak4が発売され、話題を呼んでいる。TNCは現在はほとんど開発されておらず、昔ながらのTNCを使ってAPRSを構成している例も少なくない。そんな中で、PICマイコンを使ったPICTNCなども開発されたが、復調性能がいまいちで、実用にはちょっと物足りない。そして、このTinyTrak4が発売された。TinyTrak4はKISS TNCモードを備えており、I-Gate等に使用することが可能。AFSK変調を復調する訳だが、この復調性能がいかなるものかを比較してみることにした。
TNC機種選定
TNC-22を使用することにした。TNCは多数市販されていたが、骨格となるAFSK変復調チップはほとんど一緒なので、他のTNCを使っても復調差は生じないと考えられる。
着目する性能
以下の2点に絞って受信性能を比較する。
- ノイズ耐力試験
ホワイトノイズ(AWGN)を加えるた試験を行う。
自然界の存在するノイズは、無色透明。AWGNと呼ばれる。これは、すべての周波数帯域で均一なノイズスペクトラムをもつのが前提とされている。
- イコライジング補正耐力
周波数特性を加えた試験を行う。
無線通信の音声信号周波数スペクトラムは、送信機が持つ周波数特性と受信機が持つ周波数特性が加算されると推定される。こういった信号をAFSK復調ICで復調するわけだが、この周波数特性を補正する動きが行われている。こういった周波数特性をもった信号をTinyTrak4で受信したときに、どうなるのかを調べる。
着目する周波数成分
- AFSK変調は 1200Hz と 2200Hz の成分で構成されているので、この2つの周波数成分に着目する。
接続イメージ
テスト手順
信号源生成
AWGNを加えたテスト
- 試験端末をTNC-22とし、TNC-22のCOMポートとPCを接続し、パケットをモニター出来たかどうか判断する準備を行う。TNC-22のAF入力端子とPCのスピーカ出力端子を接続する。
- PC側でSoundEngineFreeを起動させ、NoNoizeIdeal.wav を再生する準備を行う。
- PC側でWaveGeneを起動させ、AWGNを発生させる準備を行う。
- AWGNを与えない状態で、NoNoizeIdeal.wav を再生させて、TNC-22でパケットが受信できるかどうかチェックする。パケットが受信できなけれな、PCのスピーカレベルを調整し、10回中10回パケットが受信できる事を確認する。
- AWGNを与えて、同じように NoNoizeIdeal.wav を再生させる。AWGNのレベルはWaveGeneで行う。AWGNレベルが大きすぎると、TNC-22でパケットが復調できなくなるので、そのAWGNレベルを記録する。
- 試験端末をTinyTrak4にして、上記と同じように試験を行い、与えたAWGNレベルを記録する。
- 試験中、AGWPEも同時起動しておき、AGWPETerminal画面の復調結果を確認し、与えたAWGNレベルを記録する。
イコライジングを加えたテスト
基本的には、AWGNを加えたテストと同じだが、AWGNを与える操作を行わずに、SoundEngineFreeの調整タブの質感値をいじくる。これは、周波数全体に傾きをつけることが出来る機能である。
マイナスにすると、高音が持ち上がる感じに作用し、
プラスにすると、低音が持ち上がる感じに作用する。
パケット通信の無線機の送受信構成から考えると、高音が持ち上がるという事は少なく(?)どちらかというと、高音がカットされる方向と思われる事から、プラス方向にいじってみて、どこまで復調できるかどうかを調べる。(ついでにマイナス側も、見ておこう。)
実験結果
AWGNを加えたテスト
AWGN Level | TNC-22 | TinyTrak4 | AGWPE |
-40 | 100% | 100% | 100% |
-30 | 95% | 100% | 100% |
-20 | 90% | 95% | 100% |
-15 | 50% | 90% | 100% |
-13 | 40% | 70% | 100% |
-11 | 20% | 40% | 100% |
-10 | 10% | 10% | 100% |
-8 | 0% | 10% | 90% |
-7 | 0% | 0% | 80% |
-6 | 0% | 0% | 50% |
-5 | 0% | 0% | 30% |
-4 | 0% | 0% | 0% |
イコライジングを加えたテスト
質感[%] | TNC-22 | TinyTrak4 | AGWPE |
100 | 100% | 100% | 100% |
50 | 100% | 100% | 100% |
0 | 100% | 100% | 100% |
-12 | 100% | 100% | 100% |
-34 | 50% | 100% | 100% |
-50 | 10% | 100% | 100% |
-100 | 0% | 5% | 100% |
ランクつけは、
1位 AGWPE, 2位TinyTrak4, 3位TNC-22
LPFをかけたときの復調限界カットオフ周波数
これは、AGWPEの時がもっとも周波数特性が厳しいのに復調できていることを表している。
ランクつけは、
1位 AGWPE, 2位TNC-22, 3位TinyTrak4
総合ランキング発表!!
第一位 AGWPE
第二位 TinyTrak4
第三位 TNC-22
総評
- ノイズ耐力といい、イコライジング補正能力といい、全くといってダントツなのが、AGWPEだった! まさに、敵なし状態! これは凄い! ものすごいです! その次に、良い戦いを見せてくれたのが、TinyTrak4とTNC-22。ノイズ耐力はTinyTrak4が上位にランクインし、まさにDSP補正がうまく効いているのが目に見える。一つザンネンだったのが、イコライジング補正がうまく効いていないようで、TNC-22にちょっとだけ負けてしまった。ただこのあたりは、TinyTrak4の内部処理をちょっと治しただけで、すぐに追い上げてくる余地が残されているため、TinyTrak4を堂々の第二位とした!。そして歴代TNC-22は最下位となってしまったのである。時代の流れかしら・・・ 各TNC様、今後ともAPRSを支えてくださいます様、宜しくお願いします。O(・v・)O イエイ!!
使用したアプリケーション。
参考サイト
- さすが本田さん。定量的な評価ばっちりですね。AGWPEの健闘にはびっくり。CQ誌に投稿してみては? -- JR7OVC
- あ こばやしさんだー♪ AGWPEには本当にびっくりです! かなり帯域制限をかけてから信号処理を行っているようですね。ステキ! -- JM7MUU 本田
- 本田さんこんばんは。初めてお邪魔します。とても楽しそうな実験ですね。 -- JE0DKR
- おはよーございまーす♪ とっても楽しい実験です! ところで、PICTNCもこの試験の対象にしようと試みてますが、なぜかAGWPEのパケットをPICTNCが復調してくれず・・・ 参りました。でも、KPC-9612の変調音は復調してるんです。TT3Pの変調音も復調してくれないし・・・んーPICTNCよくわからなくて、参りました^^;; -- JM7MUU 本田
- 信号ソースを再生させるサウンドカードを高級なものにしたら、AGWPEの変調を復調するようになりました。なんだぁ・・・ PICTNCの復調周波数が顕著ということかぁ? -- JM7MUU 本田
- これは、少しの周波数ずれでも許容できないというふうに解釈できる。 -- JM7MUU 本田
- 新サウンドカードで再生させたものは、PICTNCに入力されるレベルを100mVp-pにしても正常に受信できた。 -- JM7MUU 本田
- サンプリング周波数に微妙なのかなぁ・・・ でもここでいえることは、TinyTrak4やTNC-22やAGWPEで十分復調できる信号が、PICTNCだと復調できない可能性があるということだ。 -- JM7MUU 本田
- 再生側のサンプリング周波数を微妙にずらしてみたけれど、やっぱり受信せず。んー。PICTNCは好きじゃないです。Hi -- JM7MUU 本田